ウォーターガイド

人間も動物も植物も、生きとし生けるもの全てが、「水」を必要とします。私たちのカラダは約60%を「水」が占めていて、毎日適量の水を摂ることで健康が保たれています。「水」は私たちのカラダに必要不可欠で、健康の源といっても過言ではありません。健康や美容に気を遣っていても、毎日飲んでいる「水」を気にしている人は少数。しかし、食事と同じように「水」にもこだわることで、カラダの中から健康になることができるのです。

「水」がどんな役割を果たしているか、もっと上手に生活に取り入れる方法はないか。『ウォーターガイド』は身近でありながら意外と知られていない「水」の全てをプロの先生を迎えてレクチャーします。正しい知識を身につけて、毎日の暮らしと健康に役立てて下さい。

水と暮らし

夏場は汗、冬場は乾燥に注意して水分補給

人間は、発汗により体温を調節しています。また栄養分を運搬したり、いらなくなった老廃物を排出したりするのも水の重要な役目です。

夏は他の季節に比べて汗をたくさんかきます。暑い時に汗をかくのは体温を下げるためです。汗をかいて体内の水が不足すると体温が上昇し、のどが渇きます。そうすると、水分の補給を要求します。しかし、高齢になると水分が不足した状態でも、のどの渇きを強く覚えなくなるので注意が必要です。「のどが渇きすぎた状態」になってしまうと、水分が吸収しにくくなるので、汗をかいたと感じたら、こまめに水分を補給しましょう。時間を決めて水分補給するのも良い方法でしょう。

もちろん、冬場でも体は汗をかいています。あまりのどが渇かないからと水分補給を怠っていると、体が冷えてしまいます。常温の水で水分補給を心がけましょう。また、冬場はのども乾燥しやすいので、水分が必要です。食欲が減ると、食物から摂れる水分量が減るので水分が不足しがちです。食欲がないときも、水分は摂るようにしましょう。

参考文献
『水の健康学』(新潮社) 著者:藤田紘一郎

夜の1杯で体内の水分量を満たし朝の1杯ですっきり目覚める

睡眠中も体は働いているので、思っている以上の汗をかいています。呼吸による水分の放出を含めて、平均約500ml、多いときには1リットルも水分が失われ、起きると体はカラカラになっています。

そこで、寝る前にきちんと水分を補い、体内の水分量を満たしておきましょう。夜中にトイレに起きるのが面倒だから水を飲まない人も多いと思いますが水分補給の方が優先されるべきことです。酸性に傾いた体内を睡眠中にアルカリ性に戻してあげることができます。温度は体に負担がかからない常温が適切です。

また、睡眠中に失った水分を補給する、目覚めの1杯も大切です。全身にくまなく水分が行き渡ることで、体内も目を覚ましてくれます。起き抜けは、食欲があまりわきません。そのまま食事をすると、胃に負担がかかることもあります。また、キリッと冷えた水を飲むと、すっきり目覚めることができます。胃腸の弱い人は常温水を飲みましょう。

参考文献
『水の健康学』(新潮社) 著者:藤田紘一郎

水をおいしく飲むために、温度も気にしてみよう!

水もどうせ飲むのであれば、少しでもおいしく飲みたいもの。おいしく飲むために大事なポイントは温度です。できるだけ冷たい方がおいしいと思われがちですが、あまり冷たすぎるとおいしいという感覚が鈍ります。味覚は人により違いがあり、自分に適した温度を見つけることは必要ですが、一般的には5~ 12℃が心地よいと感じる冷たさになります。

通常、冷蔵庫は1~5℃に設定されているので、長時間冷蔵庫に入れたままだと冷えすぎてしまいそのまま飲むと、体を内側から冷やしてしまいます。そこで、冷蔵庫から出してすぐ飲むのではなく、コップに注いで少し置いておけば、夏場ならすぐに適温になります。野菜室は5~7℃とやや高めの設定なので、野菜室に保存しておくのもよいでしょう。体が冷えやすい冬場は、少し高めの温度で飲むのがおすすめです。常温の15~17℃で十分おいしく飲めるはずです。

また、ミネラルウォーターのまろやかな甘みを味わうなら、常温がおすすめです。

水と健康

スポーツ界で注目の水分補給 ウォーターローディング

ウォーターローディングとは、スポーツの世界で注目されている水分補給方法です。試合前の一定期間、毎日1~1.5ℓの水を少しずつ摂取することで、体を常に水で満たしておきます。すると、試合中、発汗により水分を失っても、運動能力の低下を防ぐことができるという方法です。個人差はありますが、内臓に負担をかけないように、1回の摂取量は250mlが目安です。

マラソンランナーが試合中に水分を補給する場面が見られますが、ウォーターローディングはこれを発展させたものと言えます。

運動によって排泄される汗にはミネラル分も含まれています。運動中のパフォーマンスを維持するためには、カルシウムやナトリウムが必要になります。そのため、ミネラルバランスの良いミネラルウォーターを飲むのがおすすめです。ただし、ミネラル含有量が多すぎても、ミネラルの一部を体外に排出してしまいます。逆に、ミネラルの少ない軟水では必要なミネラルが摂取できません。ウォーターローディング法には、硬度300くらいの硬水が最適です。

参考文献
『水の健康学』(新潮社) 著者:藤田紘一郎

元気な飲み水選び、4つのポイント

健康を促すための飲み水を選ぶには、4つのポイントがあります。

1.有害物質を含まない:
日本の水道水は、大量の塩素で雑菌を除去しています。また、生活排水、工業排水、農業排水による環境汚染が地下水や水道水源水にも広がっています。そのため、トリハロメタンなどの発がん性物質も生成されています。水銀、ヒ素、硝酸態窒素などの化学物質、トリハロメタンなどの発がん性物質、大腸菌などの微生物を含まないことは最低条件です。

2.ミネラル成分をバランスよく含む:
ミネラルは体内の活動に欠かせませんが、自ら合成できないので、体外から摂取することが必要です。水に含まれるミネラルで特に重要なのが、カルシウムとマグネシウムです。

3.酸素と炭酸ガスを適度に含む:
水は加熱処理すると酸素が抜けておいしくありません。清流や地下水には酸素や炭酸ガスが多く含まれていますが、酸素や炭酸ガスが抜けると清涼感がありません。

4.弱アルカリ性である:
もともと人間の体液は弱アルカリ性に保たれていますが、肉や卵、バターなどの動物性食品を摂ることが多いと、酸性に傾いてしまいます。アルカリ性の水はその状態を中和します。

参考文献
『水の健康学』(新潮社) 著者:藤田紘一郎

子どもは大人以上に水分が必要!

子どもの体は水分が出て行きやすくなっているため、大人以上に水分を必要とします。子どもは小さな体に関わらず、大人と同じ数の汗せんを持っているので、相対的に汗をかく量も多くなります。1日に必要な水分量は、幼いときほど多く、体重1kg当たりで、新生児では50~120ml、乳児で120~ 150ml、幼児なら90~100ml、学童で60~80mlが必要です。一方、成人の場合、40~50mlで充分です。学童でも大人の倍近くの水分を必要としており、体重20kgの子どもは、毎日1.2ℓ~1.6ℓの水分が必要です

スポーツの世界で既に行われている水分補給の方法、「ウォーターローディング」は、子どもの健康にも役立ちます。水をこまめに飲むことは、大人にもおすすめです。

参考文献
『水の健康学』(新潮社)
『藤田式ウォーターレシピ』(主婦の友社)
『知られざる水の「超」能力』(講談社+α新書)
著者:藤田紘一郎

種類・成分

水にもたくさんの種類がある、違いを知って飲み分けよう

ナチュラルミネラルウォーターの他にも、水にはさまざまな種類があります。生活に必要な水道水を始め、身近で手に入れやすい水を選んで紹介します。

アルカリイオン水:
水にカルシウム化合物を添加して電気分解した水で、厚生労働省が「機能水(特別な機能を付加した水)」として唯一認めています。健康な人の体液は、pH値が7.4の弱アルカリ性なので、アルカリイオン水は身体との相性がよいとされています。また、人工的にイオン化されているので粒子が細かく、体内に吸収されやすくなっています。

水道水:
水源から浄水場に水が届くまで様々な場所を通るため、汚染物質が水の中に取り込まれます。その汚れを除去するために、浄水場で塩素を主とした消毒剤が入れられるため、水道水を飲むなら浄水器を取り付けるか、沸騰したらやかんの蓋を取り、10分程沸騰させ続けることをおすすめします。

海洋深層水:
水深200m以下にある深海水のこと。太陽光が届かず水温が低いため、海洋性細菌が少なく水質汚染がありません。人間の体内のミネラルバランンスと似ており、ナトリウムやマグネシウムが含まれています。そのまま飲むと塩辛いので、ほとんどのメーカーは塩分を取り除き、殺菌などの処理をして加工しています。

参考文献
『万病を防ぐ「水」の飲み方・選び方』(講談社+α文庫)
『ミネラルウォータの処方箋』(日東書院)
著者:藤田紘一郎

殺菌処理の方法で分類される、日本のミネラルウォーター

人間の身体の大半が水であるのと同様に、地球の約2/3を水が占めています。また、人の体液と海水の成分が近いことも、不思議な共通点だといえます。地球上の水のうち、97.5%を占める海水は飲むことができません。約2%は氷河と地表水で、飲用するには処理が必要です。残りのわずか1%以下を占める地下水のうち、処理をせずに飲むことができる水があります。この地下水の一部が「ナチュラルミネラルウォーター」なのです。

地上に降る雨や雪は、様々な道を辿り、その歩む道のりにより水質、純度、味が構成されていきます。地下水となった水の一部は、大自然のフィルターを長い年月をかけてくぐり抜け、不純物が取り除かれると同時に自然なミネラル成分が与えられます。このため、天然の水「生水」には、様々なミネラルが含まれているのです。しかし、水に含まれるミネラルは、殺菌処理をすると減る可能性があります。

農林水産省が発表しているミネラルウォーターの品質表示のガイドラインでは全ての水に殺菌処理を義務づけ、容器入りの飲料水を「ミネラルウォーター類」と呼び、殺菌処理の方法により4つに分類しています。

1.ナチュラルミネラルウォーター:
ナチュラルウォーターの中でも、ミネラルをもともと含む地下水を原水とした水。処理方法はナチュラルウォーターと同じく、沈殿、ろ過、加熱殺菌に限る。日本で一般に「ミネラルウォーター」と呼ばれるタイプ。

2.ナチュラルウォーター:
特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、ろ過、加熱殺菌以外の物理的、化学的な処理を行っていないもの。

3.ミネラルウォーター :
ナチュラルミネラルウォーターの中でも、品質を安定させるためにミネラルの調整やばっ気、複数のナチュラルミネラルウォーター混合、紫外線やオゾンによる殺菌、除菌などの処理を行っているもの。

4.ボトルドウォーター:
1~3以外の飲料水。例えば、純水、蒸留水、水道水など。処理方法の制限はなく、大幅な改変を加えてもよい。

日本のミネラルウォーターは、全て殺菌が義務づけられていますが、ヨーロッパでは逆に「殺菌しないこと」が義務づけられ、殺菌処理した水はナチュラルミネラルウォーターと呼べません。なぜなら、殺菌のためとはいえ、加熱すると水の組成は変わり、本来の水が持つミネラルやおいしさの元ともいえる酸素や炭酸ガスがなくなってしまうからです。安全面の問題をどうクリアしているかなど、ヨーロッパのミネラルウォーターについての詳細は、「ミネラルウォーター」「「水」の先進国ヨーロッパの日本とは異なる“良い水”の基準」をご一読ください。

参考文献
『万病を防ぐ「水」の飲み方・選び方』(講談社+α文庫) 著者:藤田紘一郎

水の酸性とアルカリ性を知れば、効果的に水を利用できる

硬度とは別に、水分中の水素イオンの濃度指数pH(ペーハー)でも分けられます。pHは0から14までの数値で表され、pH1は強い酸性で、pH14が強いアルカリ性、その中間のpH7が中性になります。

健康な人の体液はpH値が約7.4の弱アルカリ性なので、アルカリ性の水は体との相性がよく、吸収率が高くなります。疲れてくると身体は酸性に傾き、エネルギー分解が滞り、中性脂肪や糖の分解も鈍くなります。アルカリ性のナチュラルミネラルウォーターの他に、水を電気分解してつくるアルカリイオン水もあります。エビアンのpH値は7.2で弱アルカリ性です。

酸性の水を日常的に飲むことは健康のためにはおすすめできません。しかし、弱酸性の水はうがいや消毒に利用できます。また、人の肌は弱酸性なので、弱酸性の水で顔を洗ったり、化粧水として使うとしっとりします。

参考文献
『万病を防ぐ「水」の飲み方・選び方』(講談社+α文庫) 著者:藤田紘一郎

ミネラル量と水の硬度、硬水と軟水の違い

水には主にカルシウムイオンとマグネシウムイオンが含まれていて、水1000ml中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表わした数値を「硬度」といいます。

WHO(世界保健機関)の基準では、硬度が0~60mg/l 未満を「軟水」、60~120mg/l 未満を「中程度の軟水」、120~180mg/l 未満を「硬水」、180mg/l以上を「非常な硬水」といいます。また、日本においては一般的には、硬度0~100mg/lを軟水、101~300mg/lを中硬水、301mg/l以上を硬水に分けられています。東京の水道水の硬度は60mg/l前後で軟水に、エビアンの硬度は304mg/lなので硬水になります。また、一般的には、硬度0~100mg/lを軟水、101~300mg/lを中硬水、301mg/l以上を硬水に分けられます。見た目は同じですが、まろやかに感じたり重々しく感じたり、水にも風味があるのはこのため。成分の違いから、一般的に軟水は口当たりが軽く、硬水はマグネシウムが多いほどしっかりした飲みごたえを感じるようです。

硬度=(カルシウム量mg/l×2.5)+(マグネシウム量mg/l×4)

軟水と硬水の飲み分けのすゝめ

水の硬度はその土地の食文化と密接に関連しています。肉がメインの西欧料理ではミネラルが不足しがちなため、ヨーロッパでは硬水で不足しがちなミネラルを補っています。日本も食の欧米化が進み、食事だけではミネラルが不足しがちになっています。食文化のグローバル化が進んでいるのにもかかわらず、水のグローバル化は遅れたままになっています。食事によって、軟水と硬水を飲み分けてみていはいかがでしょうか?

一般的な総称軟水中硬水硬水
硬度0〜100mg/l未満100〜300mg/l未満300mg/l以上
WHOによる分類軟水中程度の軟水硬水非常な硬水
硬度0〜60mg/l未満60〜120mg/l未満120〜180mg/l未満180mg/l以上

参考文献
『万病を防ぐ「水」の飲み方・選び方』(講談社+α文庫)
『ミネラルウォータの処方箋』(日東書院)
著者:藤田紘一郎

水と人間のカラダ、水が持つ力

医学的、科学的研究によると、水には様々な力があるとされていますが、人間の身体にとって大切な作用として大きく分けると、2つの働きがあります。

ひとつは物を溶かす力、すなわち溶解作用です。水を飲むことで水分はもちろん、栄養分を体内の隅々に補給し、身体に吸収することができます。食べ物は水を媒介にして体内で吸収しやすい栄養素になり、全身を巡る血液に取り込まれ、体中の組織に運ばれます。その血液の元になっているのが水です。

ふたつめは温まりにくく、冷めにくい性質です。気温が大きく変化しても人間は一定の体温を保つことができるのは、身体に水が多く含まれているためです。

また、暑いときは体内の水分を汗として出し、汗の蒸発により皮膚は熱を奪われ、体温の上昇を防ぎます。熱が出ると、医者からたっぷり水分をとるように言われるのは、汗が蒸発するときに身体の熱を奪い、体温を下げる効果とともに、発熱によって失われた水分の補給のためです。

参考文献
『知られざる水の「超」能力』(講談社+α新書)
『ミネラルウォータの処方箋』(日東書院)
著者:藤田紘一郎

水の飲み方

水はたくさん飲めば、飲むほど健康にいいですか?

水は人間の体に必要不可欠な栄養素ですが、「水を飲みすぎる」ことでトラブルもあります。

通常、水をしっかり飲むと、のどは潤います。しかし、限度を超えて水を飲むと、どんなに水を飲んでも渇きが収まらなくなります。そうすると、また水を飲みすぎてしまいます。また、摂りすぎた水を外に出そうと、体内でムダなエネルギーを使うことになります。

個体差がありますが、1日に飲んでもいい水の限界量は、3リットルと言われています。それ以上の水を飲んでいる人は、注意しましょう。

参考文献
『知られざる水の「超」能力』(講談社+α新書) 著者:藤田紘一郎

水の歴史

地形と地質が違いを作る、世界の水と日本の水

一般的に、ミネラル分が多い水は硬水、少ない水は軟水と区別されます。(硬度に関しては、「ミネラル量と水の硬度、硬水と軟水の違い」をご一読ください。)

日本の国土は山地が急峻で平野地帯が広くないため、高地から低地への水の流れが速く、雨水の多くは河川を通り、短時間で海に流れ込みます。地層中のミネラルを吸収する時間が短いうえ、もともと火山地帯でミネラル分の少ない地層が多く、地中の鉱物成分があまり溶け込みません。そのため、日本の水はミネラル分の少ない軟水となります。

一方、ヨーロッパは平坦な大地が広がるため地中滞在時間が長く、ミネラル分の多い石灰岩の地層が多いので、地層のミネラルを含んだ硬水が多くなります。

参考文献
『万病を防ぐ「水」の飲み方・選び方』(講談社+α文庫) 著者:藤田紘一郎

地球上を循環する水のうち、人間が使える水はほんのわずか

地球の表面の70%を海洋が覆い、30%は陸地に覆われています。その陸地も10%が氷です。この大量の水のうち、97.5%は海水なので、人間が使える淡水は2.5%にも満たず、飲用などに使える水は地球上の水のうちわずか1%以下となります。

つまり、私たちが使っている水はとても貴重な資源と言えます。

水は地球上で何度となく循環しています。海水が太陽熱で温められて水蒸気になり、雲に集まった水蒸気が雨や雪になって地上に降り注ぎます。地上の雨や雪が湖や河川に集まったり、地中を通って地下水になり、再び海に戻ってきます。

空気中のちりやほこり、硫黄酸化物や窒素酸化物が含まれている雨水は、土壌の隙間でろ過され、雨水に含まれる窒素やリンは土壌中の微生物に摂取されて取り除かれます。また、土壌中のカルシウムイオンが雨水の水素イオンとイオン交換し、弱酸性だった雨水は中性に変化します。さらに、土壌の下にある砂と小石の層を通過する際に、より細かくろ過されます。

このように天然のフィルターによってろ過を繰り返した雨水は、不純物が取り除かれ下水脈に辿り着きます。地下水は厚さ数十メートルの岩石帯を時間をかけて通過します。このとき、岩石から溶け出したさまざまなミネラルが水に加わります。こうして長い時間をかけて生まれる地下水が、ミネラルウォーターと呼ばれているのです。

「エビアン」は、天然フィルターの中を約15年の歳月をかけてゆっくりと流れていきます。類まれなるミネラルバランスで、一定の温度を保って湧き出る水として採水されています。詳細は「エビアン 水のふるさと」をご一読ください。

参考文献
『水圏の環境』(東京電気大学出版局) 著者:道奥孝治・村上和男

水のまめ知識

1日1リットルの水分は、ジュースでもいいですか?

子どもは水代わりに他のものを飲むことが多いという現状があります。そのひとつがジュース。甘味料の入った飲み物は、缶ジュース1本に30g(約大さじ2杯分)の砂糖が含まれます。ペットボトル1本を飲み干したら、その量は1.5倍になります。水代わりに飲んでいると、あっという間にカロリー過多になります。

牛乳については、日本人は牛乳の消化吸収に不可欠な酵素を持っていない人が多く、その人達は牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしたり、下痢したりします。ミネラルウォーターや食事でもカルシウムを補うことができます。

毎日1リットル飲むのは、やはり水がいいのです。

参考文献
『知られざる水の「超」能力』(講談社+α新書)
著者:藤田紘一郎

ミネラルウォーターのラベルの見方が知りたい!

コンビニでもスーパーでも、たくさんのミネラルウォーターが販売されているので、何を選んでよいか迷ってしまいます。みなさんはどうやって選んでいますか?デザインで買う人も多いでしょう。ミネラルウォーターにはすべてラベルが貼られています。そこからいろんな情報を知ることができるので、選ぶ手がかりのひとつになります。

「品名」や「名称」
表記は違いますが、農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」により、下記の4つに分類。

  • ナチュラルミネラルウォーター
  • ナチュラルウォーター
  • ミネラルウォーター
  • ボトルドウォーター

原材料がどんな水なのか
農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」により、下記の7つに分類。

  • 鉱水:ポンプなどで採水したミネラルを含む地下水
  • 鉱泉水:水温25℃未満でミネラルを含み自噴している地下水
  • 伏流水:浅い地下水
  • 湧き水:自噴している地下水
  • 浅井戸水:浅い井戸水
  • 深井戸水;深い井戸水
  • 温泉水:水温25℃以上でミネラルを含み自噴している地下水

ミネラルウォーターが製造された国名

加熱殺菌、オゾン殺菌、紫外線殺菌など、殺菌処理の方法
ヨーロッパ産のものは、非殺菌が多い。

未開封の状態で保存可能な日付

水の中に含まれる成分の名前と分量
一般的には、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムの4種類が記載される。
詳細は「ミネラルウォーター」の「ナトリウムやカリウムも大事なミネラル。水でバランスよくミネラルを摂取しよう」をご一読ください。

水の硬度
水に含まれるカルシウムとマグネシウムの比率(=硬度)を表示。詳細は、「種類と成分」の「ミネラル量と水の硬度、硬水と軟水の違い」をご一読ください。

原材料の水の酸度
Ph7.0が中性で、数値が少ないほど酸性に近く、高いほどアルカリ性に近い。詳細は「種類と成分」の「水の酸性とアルカリ性を知れば、効果的に水を利用できる」をご一読ください。

以上の情報が記載されていますが、硬度、pH、栄養成分などを見て、体調に合わせて選ぶといいでしょう。

参考文献『水の健康学』(新潮社)『ミネラルウォーターの処方箋』(日東書院)著者:藤田紘一郎

ミネラルウォーター

ナトリウムやカリウムも大事なミネラル。水でバランスよくミネラルを摂取しよう

ミネラルウォーターには、カルシウムとマグネシウム以外にも、様々なミネラルが含まれており、ナトリウムとカリウムを加えた4種のミネラルがラベルに記載されています。

ナトリウムと言えば、身近なものとして塩(塩化ナトリウム)を思い出しますが、体内の含有量はマグネシウムとほぼ同じで微量です。4分の1は骨格内に含まれ、ほとんどが細胞外液の中に溶け込んで体液の浸透圧を維持しています。また、他のミネラルの入れ替わりを助け、カリウムとの相互作用で筋肉の収縮や神経伝達がスムーズに行えるようにサポートしています。

カリウムは細胞内に90%以上含まれ、筋肉や神経細胞に多く存在し、筋肉の正常な収縮や神経伝達をしてくれます。細胞内液に溶け込み、pH値や浸透圧を調整し、体液を正常なバランスに保つ働きがあります。また、ナトリウムは、食品から簡単に摂ることができますが、排泄も多いので気をつけましょう。

ミネラルはお互いに影響し合って体内機能を整えているため、どれかが欠けていると働きが鈍くなります。そのため、特定のミネラルを摂るのではなく、まんべんなくミネラルを摂ることが大事になります。

参考文献
『ミネラルウォータの処方箋』(日東書院) 著者:藤田紘一郎

骨を丈夫にするミネラル、カルシウムとマグネシウム

ミネラルは身体に不可欠な栄養素です。昔の日本人はミネラルが豊富な海藻や雑穀を食べていましたが、食生活が欧米化するにつれてミネラルが不足しがちになっています。食事だけでなく、ミネラルがバランスよく含まれたミネラルウォーターを上手に利用すれば効率よく補給できます。では、ミネラルウォーターに含まれるメインのミネラル、カルシウムとマグネシウムは、それぞれどんな働きをしているのでしょうか。

カルシウムは、人間の身体の中に最も多く含まれるミネラルで、その99%が歯や骨の中にあり、残りの1%は、筋肉や神経、体液中に含まれています。

日本人にとってカルシウムは最も不足しがちなミネラルです。日本の多くは軟水で、カルシウムを摂取する機会が欧米に比べて低いのが理由のひとつに考えられます。

体液中のカルシウムは骨や歯の形成を助けたり、筋肉の収縮を促したり、血液の凝固を助けたりする働きもあります。カルシウムが不足すると、体にさまざまな不調をきたし、精神的にもイライラしがちになります。

マグネシウムは、カルシウムが体内でしっかり働くようにサポートし、カルシウムが骨から溶け出すのを防ぎ、血流を整える働きをするミネラルです。体内含有量は0.14%と微量で、カルシウムと同様にそのほとんどが骨や歯に含まれます。

カルシウムをしっかり摂っていても、マグネシウムが不足すればカルシウムが十分に働かず、不足しているのと同じ状態になります。そのため、バランスよく摂取することが大事で、一般的には、カルシウムとマグネシウムは2:1の割合で摂ると良いとされます。

また、マグネシウムは過剰摂取すると下痢を起こしやすいので注意しましょう。

参考文献
『ミネラルウォータの処方箋』(日東書院) 著者:藤田紘一郎

「水」の先進国ヨーロッパの日本とは異なる”良い水”の基準

ヨーロッパでは昔から温泉水を飲む「飲泉」がごく普通に行われてきました。「天然の水」がいかに健康によいかを、肌で感じ取っていたのでしょう。 19世紀半ばにはフランスの医学アカデミーが国内の飲泉の水を医学的に検証し、1919年にはイタリアがミネラルウォーターに関する法令を制定されています。

安全性が優先され、殺菌が原則となっている日本の水と違い、ヨーロッパではミネラルウォーターと銘打つ水は採水地の水をそのままボトリングしており、殺菌処理をしてはいけないという決まりがあります。天然の水にミネラル分が含まれていることを知っている、ヨーロッパの歴史によるものだと思われます。

CODEX(※)によるEUの「ナチュラルミネラルウォーター」の基準

  1. 水源があらゆる汚染から完全に隔離、保護された地下水であること
  2. ミネラル成分や採水時の温度が一定であること
  3. 採水地で直接ボトリングされていること
  4. 殺菌処理など一切の加工をせずに自然のままであること
  5. 健康に良いと認められていること

ヨーロッパでは、採水地の周辺に工場やゴルフ場、農地、牧場などの建設が禁じられ、水質源が汚染されないように環境の保護に力を入れています。また、一日に何度も品質をチェックするなど、安心して天然水が飲めるよう努力されています。ミネラル分の基準値が一定であり、ヨーロッパと日本のミネラルウォーターは、大きく異なっていることがわかります。

※CODEX
消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1962年にFAO及びWHOにより設置された国際的な政府間機関であり、国際食品規格の作成等を行っています。

参考文献
『万病を防ぐ「水」の飲み方・選び方』(講談社+α文庫)
著者:藤田紘一郎

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